SIGMA 105mm F1.4 DG HSM | Art(ニコンFマウント)

最高のシグマArtフラグシップ

長所
・驚異的な解像力
・超低収差かつ美しいボケ味
・F1.4としては高速なAF駆動
・ピントの山が見やすい
短所
105mmの巨大フィルター径
・大砲レンズと同等の巨大フード
・約1600gの重量
・AF多用だとカメラボディのバッテリー消費が早くなる
※評価途中


2414G、5814G、シグマArt40mmF1.4、と揃えてきたF1.4大口径レンズだが、中望遠は元々苦手だったこともあり、ずっと後回しにしてきた。
消費税増税も迫る中、前々から気になっていたシグマArt135mmF1.8をそろそろ購入しようかと思い始めた矢先、ソニーがFE 135mm F1.8 GMという怪物レンズを出してしまった。その恐るべきベンチマークを見るやいなや孤高の性能と思われていたArt135へ熱意が冷めてしまい、どうせならもっと尖った個性的なレンズが欲しいと、別のものを探すことに。



そこで真っ先に候補に挙がったのが、このArt105mmF1.4「BOKEH-MASTER」である。Art135と同等の解像性能に加え、それを上回るボケ味、さらにシグマSportsと同等の筐体仕様という公式フラグシップ認定に惹かれ、ちょっと無理して購入に踏み切った。予算的にやや足が出てしまったが、結果的にそんなことが些細に思えるほどの満足感を得られた。

まず挙げるべきは、シグマArtラインお馴染みの驚異的な解像力。このレンズはその中でも特に名高いArt135と同等で、開放からでさえ中遠景にも十分な切れ味を誇る。遠景は絞って撮るものという従来の常識を根底から覆すレベル。大口径でありながら、常識外れの大きさの前玉のお陰で周辺減光は有効口径の割にそこそこ抑えられており、絞った時の解消も早くほとんど気にならないため、状況に応じて柔軟に絞り値を選択することができる。開放から一段絞れば周辺も立ち上がり、さらに安定する。

だがこのレンズはそれにとどまらず、なんとニコン純正f/1.4ラインに肉薄するボケ味をも実現している。従来のシグマArtレンズは解像度が突き抜けている代わりに後ボケの硬さがやや目立つものが大半で、この点では到底純正には及んでいなかった(それが理由で、40mmArtが登場するまで私はシグマArtレンズに手が出せなかった)。


※引用元:LensTip
Sigma A 105 mm f/1.4 DG HSM - Chromatic and spherical aberration - LensTip.com
Nikon Nikkor AF-S 105 mm f/1.4E ED review - Chromatic and spherical aberration - LensTip.com

上の色・球面収差テスト画像の左がArt105、右がAF-S NIKKOR 105mm f/1.4E ED。味付け傾向の違いはあるが、共にチャートの文字が形を保ちつつなだらかに崩れていくハイレベルなボケ質。よほど目の肥えたニッコールユーザーでもない限り、詳細を隠して左を純正ニッコールのものと言っても気づかないかもしれない。
軸上色収差までボケ質に利用している1051.4EよりArt105がやや硬いか、といった程度。代わりにArt105には色づきが全くと言っていいほど見受けられない。
球面収差補正不足によって後ボケ描写に特化している分、両者共に前ボケは粗い。

なお、純正志向の私が敢えて純正を選ばなかったのは、ここのテスト結果でArt105の方が好みの描写をしていたため(1051.4Eでも従来のf1.4Gに比べるとやや硬い、加えて色収差が大きいとなるとトータルでArt105の方が好印象だった)。
当然ながら、予算の都合もあったからなのだが…



※引用元:LensTip
Sigma A 35 mm f/1.4 DG HSM review - Chromatic and spherical aberration - LensTip.com
Sigma A 50 mm f/1.4 DG HSM review - Chromatic and spherical aberration - LensTip.com
Sigma A 85 mm f/1.4 DG HSM review - Chromatic and spherical aberration - LensTip.com
Sigma A 135 mm f/1.8 DG HSM review - Chromatic and spherical aberration - LensTip.com

ついでに旧来のシグマArtラインのテスト結果を引用。上が35mm・50mm、下が85mm・135mm。見て分かる通り、85mmを除いてどれも球面収差適量補正の描写になっており、前ボケと後ボケがほぼ均一。
比べると、色収差を抑えながら極上のボケ味を実現している105mmがいかに突き抜けた性能であるかが分かるはず。




ボケ味は個人的に最高の2414Gに迫る印象。色収差を抑えている分あの独特の繊細さはないが、その分クリアでシャープ。そして十分に寄り切らないと綺麗にボケてくれないあちらに比べ、こっちは割と離れたところにあるものもこの上なく美しくぼかせる。さらにボケの色づきも皆無に等しいので、金属質にも安心して開放付近で臨める。まさにロマン砲。使う楽しみという点でも5814Gに通じるものがある(ただし気軽さでは雲泥の差がある…)。

なお、小ボケ領域に存在する草や枝は二線ボケ傾向になりやすいが、これはどんな美しいボケ味のレンズでもこうなるので問題としない。



状況によりワーキングディスタンスを縮められなかったので上の画像はトリミングしているが、それでも十分すぎる解像度。開放付近でもD850の等倍で見ても細部を描写していることには感動を覚えた。
動物相手にはかなり短い焦点距離だが、トリミングを厭わなければ(小鳥等極端に小さな相手以外には)十分対応できるだろう。



(サブカルチャーとは無縁のこんな田舎街にすら東方痛車が停まっていたことに驚く…そして安定のレミフラ)
F4まで絞り込めばここまで大幅にトリミング(※元画像サイズ8256×5504→1600×1600)しても余裕である…恐るべし。高級レンズでもここまでトリミング耐性のあるものは決して多くない。



例によって大口径なので最短撮影距離は長く、寄れない。言うまでもなく物撮りレビューには全く使えない。簡易マクロ的な用途では最大撮影倍率1/5のArt135の方が間違いなく上。
絞りF1.4でもこの焦点距離だと暗所でのオートISOはガンガン上がっていき、その一方で快晴昼間の屋外ではすぐさまシャッター速度が上限に達してしまう。その点がなんとなくもどかしい。

AFはサードパーティ製ながら精度が高く、D850だとどんな状況でもバシバシジャスピンになる。運よく当たり玉を引けたようで何より(40mmArtの方は同じくD850で僅かに後ピン傾向だった)。
しかし、断続的にAF-Sを動作させていると突然全くAF駆動しなくなり電源を落とさざるを得なくなることが何度かあったので、ソフトウェア上の問題は抱えている模様。

駆動速度はF1.4の口径にしては意外と速く、これまた良い意味で驚かされた。おそらくSportsラインにも準ずるということでハイパワーの超音波モーターを積んでいるものと思われる。
ただし、重いレンズ群を高速で動かしている分消費電力が大きく、AFをガンガン使っていると結構な速さでバッテリー残量が減っていく(D850による1時間程度の運用で1目盛り分減少した)。とはいえ、通常環境の一眼レフカメラでの使用なら問題ないだろう。ミラーレスでの運用だと予備バッテリーがないと丸一日運用は厳しいかもしれない。

ピントリングは広く角度も大きくトルクも適度なので、明るさもあってMFは格段にしやすい。今私が所有しているレンズの中では間違いなく一番ピントの山が見やすい。お陰でピント位置がシビアになりやすい花なども積極的に狙いに行ける。
テストによるとボケ味とは切っても切れないフォーカスシフト癖があるようだが、なぜか今のところ気になったことはない(Art40では初日から結構悩まされた)。

画質面では全く不満なし。ここまで満足感の高いレンズだとは予想だにしていなかっただけに感動も一入…なのだが、やはりネックは大きさと重量。画質に拘って極限まで補正レンズを組み込んでいるため、反動で凄まじく大きく重い。1600gとか大三元レンズより重い。まあそれはArt40である程度慣らされたので何とか目を瞑れるが、真に問題なのは大きさの方。

前玉が巨大なため、フードがスポーツ報道用でお馴染みの超望遠単焦点と同じような仕様となってしまい、取り回しはお世辞にもよろしいとは言えない。
加えて収納性の悪さも際立っている。順付けだと70-200F2.8クラス対応のカメラホルスターでも太すぎるために途中でつっかえて奥まで入りきらない。無理やり押し込むこともできなくもないが、本体バッグ共に疲労負荷がかかることを考えるととても安心できたものではない。逆付けにすれば何とか収まりきるが、装着方式がバヨネットではないため即応性に欠けてしまう。この点は追々ホルスターを新調する予定だ。

そして極めつけが、フィルター問題。超望遠ズームすら余裕で凌ぐ前玉径のため、数が出ず単純な保護フィルターですら選択肢が限られてくる上に高い。これがC-PLフィルターになろうものならそこそこのレンズが一本買えてしまう価格にまで跳ね上がる。いくら何でも経年劣化の消耗品であるC-PLにそこまではたける余裕はない。なので、並みのユーザーにとっては実質C-PLフィルター使用は不可と言っても過言ではない。
よく考えてみると、純正105mmとの実売価格差がほぼ105mm径のC-PLフィルターの価格に相当していることに気づく(向こうも82mmと大きい部類だがまだC-PLフィルターは常識的な値段で入手できる)。フィルターワークまで考慮すると実質的価格差はないと言えるのかもしれない。風景がメインの人、純正とこのレンズの選択肢で悩んでいるという人は是非とも留意すべき。

公式ページ
105mm F1.4 DG HSM | Art - 五海里
Sigma A 105 mm f/1.4 DG HSM - LensTip.com

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